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前回の記事『なぜAIに指示が響かない?答えは「与える文脈(コンテキスト)」にあった』では、AI活用の「土台」となる考え方として、プロンプトの背景にある「コンテキスト」の重要性を解説しました。
([前回の記事へのリンクを挿入])
今回はその土台を踏まえ、AIの精度を向上させるための「具体的な記述テクニック」、すなわちプロンプト設計の基本原則をご紹介します。これらの原則を知っているかどうかで、AIから得られる回答の質は全く変わります。本記事では、ある原則を使うだけでAIの回答が実際に変わる様子を、「スポーツ実況」への変換タスクを通じて実践的に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
プロンプト設計の4つの基本原則
精度の高いAIの回答を得るためには、プロンプトの書き方にいくつかの基本ルールがあります。ここでは、特に重要で実用的な4つの原則をご紹介します。
1. 明確性と具体性
曖昧な指示では、AIも的を外した答えしか返せません。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって)を意識して、具体的に伝えることが大切です。
また、「300文字以内で」「箇条書きで」「JSON形式で」など、アウトプットの形式や構成を明確に指定することで、意図した通りの結果が得やすくなります。
2. 文脈の提供と役割指定
単に質問を投げるのではなく、「なぜこの質問をしているのか」「どういう前提で考えてほしいのか」といった背景情報を添えることで、AIの応答はより的確になります。
さらに「あなたは今、戦略コンサルタントです」のように役割(ペルソナ)を設定すると、AIはその立場に合わせた視点や専門用語を使って答えようとします。
3. 回答例の提示(Few-Shotプロンプティング)
期待する回答のイメージを、具体的なサンプルとして示しておくのも極めて効果的です。これは専門的に「Few-Shotプロンプティング」とも呼ばれ、AIに数個(Few)の例(Shot)を与えることで、AIの理解度を飛躍的に高めるテクニックです。
特に感情やニュアンスなど、曖昧さを含むタスクでは、「『この映画は素晴らしかった!』はポジティブです」といったサンプルを挙げることで、AIは判断基準を正確につかめるようになります。
4. 反復と改善
一回のプロンプトで完璧な回答が得られることは多くありません。まずはシンプルな指示から始め、得られた回答を見ながら少しずつ調整していくのが現実的です。AIとのやりとりは「一問一答のテスト」ではなく、対話を重ねる「共同作業」のように捉えるとうまくいきます。
参考:Google for Developers「プロンプトのベスト プラクティス」
実践:「回答例の提示」でAIはどれだけ変わる?
4つの原則の中でも、特に再現性が高く、誰でもすぐに絶大な効果を実感できるのが、3番目の「回答例の提示」です。今回はその違いを、皆さんも聞きなじみのある「スポーツ実況」を変換タスクとして試してみます。(Gemini 2.5 Flash使用)
■ パターン1:単純な命令(例文なし)
まずはシンプルに、「スポーツ実況風に変換して」とだけ指示します。
■ パターン2:「回答例」を追加した命令
次に、スポーツ実況で筆者が求めるスタイルの手本(回答例)を見せてあげます。
いかがでしたか。スポーツ実況と一口に言っても、落ち着いた語り口のアナウンサーや、熱く叫ぶアナウンサーなど、そのスタイルは様々です。
前者の「例なし」のような漠然とした指示では、AIは「スポーツ実況」を一般的な概念として捉え、無個性な解説文を生成しました。一方、後者のように「ドアが開いた!〜見事な位置取りです!」という具体的な例を提示することで、AIは「熱量が高く、ユーモラスな語り口」という特定のスタイルを正確に読み取りました。
このように、例を加えることで、AIは「指示者が求めているのは、数ある実況スタイルの中でも、この語り口だ」と明確に理解します。その結果、抽象的な指示だけでは引き出せない、特定の雰囲気やニュアンスを再現した、質の高い回答が生まれます。
AIとの対話は「共同作業」
今回ご紹介した4つの基本原則は、特別な専門知識がなくても今日からすぐに試せる実践的なものです。しかし、これらを意識するだけで、AIとの対話の質、そして得られるアウトプットの精度は大きく変わります。AIとの「対話力」そのものを磨いていくことが大切です。
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次回の記事へ続く。