本セミナーは、株式会社コグレスとMONO-Xの共催で実施され、IBM i をご利用のお客様が直面しやすい「Salesforce導入におけるデータ連携の課題」に焦点を当てました。Salesforceの基本機能から、IBM i との具体的な連携手法まで、幅広く解説されました。
第1回となる今回は、Salesforceの全体像と、いまIBM i との連携が求められる理由について取り上げます。IBM i をご利用中でSalesforceの導入を検討されている方や、すでに導入済みでデータ連携にお悩みの方にとって、役立つ内容となっています。ぜひご一読ください。
販売管理などで利用しているIBM i のデータとSalesforceのデータをどのように連携すべきか、また連携の必要性そのものについても検討するきっかけを提供することを目指しました。
特に、まだSalesforceについてご検討段階のお客様向けに、「そもそもSalesforceとは何ができるのか?」という基礎的な部分から解説が始まりました。本セミナーでは、コグレス株式会社の道菅氏がSalesforceの入門編を、その後、株式会社MONO-X の下野がIBM i との連携手法についてご紹介しました。
コグレス株式会社は、Salesforceに特化したビジネスを展開しており、Salesforceの企画・設計から構築、そして現場ユーザー向けの活用トレーニングまで多岐にわたるサービスを提供しています。
道菅氏自身は、Salesforce入社前にデジタルマーケティングやクラウド会計ソフト(freee)の企業で、Salesforceのユーザーとして活用経験をお持ちです。特にfreeeでは、Salesforceを中心としたデータ活用により、わずか6ヶ月間で営業組織の生産性を220%向上させた実績をお持ちです。この経験からSalesforceの価値を肌で感じ、Salesforce Japanに入社されました。
Salesforce Japanでは、中小企業部門で約4年半、大企業部門で2年間勤務し、製造業や商社を中心に多数のお客様を支援されてきました。その中にはIBM i (AS/400)をご利用のお客様も多く、IBM i とSalesforceの連携に関する豊富な経験をお持ちです。
Salesforceの核となるのは「顧客データ」です。企業の顧客情報や担当者の名刺情報などを基盤に、以下のようないくつもの専門領域をカバーしています。
これらの多様な機能が、すべて顧客データに紐づいており、企業全体で顧客情報を一元的に管理・活用できる「顧客データプラットフォーム」を構成しています。
Salesforceの市場での評価は、客観的なデータからも明らかです。世界的な格付け評価機関であるガートナー社の調査(マジッククアドラント)では、SalesforceがSFA(営業支援)やCRM(顧客管理)の分野で常にトップランナーとして位置づけられています。これは、機能の実装力と将来のビジョンという二つの軸で高い評価を得ていることを意味します。
Salesforceがこれほどまでに評価される背景には、大きく分けて以下の4つの強みがあります。
◦ 標準で多数のコネクタが用意されており、APIが公開されているため、様々なシステムとの連携が容易です。今日のテーマであるIBM iとの連携においても、この拡張性が非常に重要な鍵となります。
◦ 日本企業特有の業界慣習やオペレーションに合わせて、非常に柔軟なカスタマイズが可能です。そのため、「100社あれば100通りのSalesforceの顔がある」と言われるほどです。
◦ 企業、顧客、製品、社員、場所、時間など、様々な軸を組み合わせてデータを分析できます。これにより、多角的な視点からビジネス状況を把握し、戦略的な意思決定を支援します。
◦ 世界最高水準のセキュリティを誇り、企業内の役職や部署に応じて細かくアクセス権限を設定できます。経済産業省や大手金融機関など、特にガバナンスが厳しいとされる組織でも採用されており、その信頼性の高さが伺えます。
多くのIBM i ユーザー企業様では、基幹システムに重要なデータが蓄積されている一方で、営業データがExcelなどでバラバラに管理されていたり、分析に非常に時間がかかったりする課題を抱えています。また、システムが分断されていることでセキュリティリスクが増大したり、複数のベンダーとの保守契約で費用や手間がかかったりすることもあります。
このような課題を解決し、より効率的で生産性の高いビジネスを実現するために、IBM i とSalesforceの連携が推奨されています。
推奨されるシステム体制は、Salesforceを『SOE(System of Engagement:顧客接点のシステム)』、そしてIBM i を『SOR(System of Record:記録のシステム)』と位置づけるものです。
この考え方に基づき、IBM i に蓄積された「製品マスター」「顧客マスター」「販売実績」などの基幹データを、必要なものだけを厳選してSalesforceに連携させます。これにより、Salesforceの使いやすいUIで営業担当者が見たい情報を効率的に確認・分析できるようになります。
実際にIBM i とSalesforceを連携させている香料メーカーの事例をご紹介します。この企業では、IBM i から以下のデータをSalesforceに連携しています。
これにより、Salesforce上で顧客ごとの販売実績や出荷情報を確認できるだけでなく、それらの情報と紐づけて、営業担当者が行った提案の内容、現在の契約状況、見積もり、そして受注や失注といった全ての情報を一元的に見える化しています。
営業担当者やマネージャーは、パソコンだけでなくモバイルやタブレットからもSalesforceにアクセスし、顧客ごとの販売状況や見込み、注力製品のキャンペーン進捗などを随時チェックしています。これにより、日々のTODOリスト、週次・月次のチェック項目と合わせて、過去の履歴も参照しながら、顧客にどのような営業戦略を立て、製品を売り込んでいくかを戦略的に分析・実行できる体制を構築しています。
今回は、Salesforceがどのようなツールであるか、その高い市場評価と強み、そしてIBM i ユーザーにとってなぜその連携が重要なのか、具体的な事例を交えてご紹介しました。既存のシステム課題を解決し、より効率的な営業活動を実現するために、SalesforceとIBM i の連携が果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。
次回のブログ【第2回】では、IBM iとSalesforceの具体的な連携手法について、APIの活用方法や、モダナイゼーションのための関連ソリューションを掘り下げて解説します。
▼「API-Bridge」についての詳細は以下リンクをご覧ください。
API-Bridge公式サイト
お問い合わせ・ご相談はこちら