watsonx Orchestrate(ワトソンエックス・オーケストレート)は、AIエージェントを作り、動かし、管理するためのIBMの基盤です。人事の手続き、調達の承認、問い合わせ対応といった、複数のシステムをまたぐ業務をAIエージェントに任せるために使います。社内にAIエージェントが増えても、1か所で統制できるのが特長です。この記事では、専門用語をできるだけ使わずに、何ができるのか、自社の業務にどう使えるのかを解説します。
(出典:IBM watsonx Orchestrate 製品ページ(日本語))
IBMは、watsonx Orchestrateを「すべてのAIエージェントを1つのコントロール・プレーンで構築・管理する包括的なエージェント管理プラットフォーム」と説明しています。
かみくだくと、代表的なものとして、次の4つを1つの製品で行える基盤です。
ポイントは、「1つのAIに何でもさせる」のではなく、「役割の違う複数のAIエージェントやツールをまとめて動かす」ことです。オーケストレート(orchestrate)は「指揮する」という意味で、オーケストラの指揮者のような役割を担います。
「AIエージェント」と「生成AI」は、よく混同されます。違いは次のように整理できます。
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生成AI(チャットAIなど) |
AIエージェント |
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|---|---|---|
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動き方 |
聞かれたら答える |
目的に向かって手順を実行する |
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例 |
「経費精算のルールを教えて」に答える |
申請内容を確認し、規程と照合し、承認者に回す |
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人の関わり方 |
答えを読んで、人が作業する |
人は確認と承認を中心に関わる |
生成AIは「答えを返す」のが仕事です。AIエージェントは、その答えをもとに「システムを操作し、手順を進める」ところまで行います。watsonx Orchestrateは、このAIエージェントを業務で安全に使うための基盤です。
主な機能は、次の5つです。
(出典:IBM watsonx Orchestrate 製品ページ(日本語))
IBMは、主なユースケースとして次の業務を挙げています。自社の業務に置き換えながら読んでみてください。
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業務領域 |
AIエージェントに任せる作業の例 |
|---|---|
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人事・従業員サービス |
就業規則などの問い合わせ回答、入社手続き、システムの権限申請 |
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調達・購買 |
請求書と発注の照合、取引先の確認、承認の回付、例外の処理 |
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カスタマーサービス |
問い合わせ内容の把握、回答案の作成、担当者への引き継ぎ |
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社内ナレッジの照会 |
業務手順書やマニュアルからの回答。どの文書にもとづく回答かも示す |
公表されている事例には、次のようなものがあります。
(出典:IBM watsonx Orchestrate 製品ページ)
共通するのは、「判断と入力を伴う定型業務」であることです。完全に決まった手順ならRPAでも自動化できます。一方、申請内容を読んで判断したり、例外を見分けたりする業務は、AIエージェントが得意とする領域です。
IBM i(AS/400)を基幹システムとして使っている企業にとって、watsonx Orchestrateには特別な意味があります。基幹システムに長年蓄積されたデータを、周辺業務の自動化に活かせるからです。
たとえば、次のような業務が考えられます。
いずれも、今は人が5250画面を操作したり、帳票を見比べたりしている業務です。
AIエージェントとIBM i をつなぐ方法は、要件によって変わります。一般的には、次のような考え方があります。
既存のRPGプログラムを書き換えずに、データの参照や処理の呼び出しから始められる場合も多くあります。どこまで改修せずにできるかは、システムの作りと要件次第です。
MONO-Xでは、IBM i 向けのAIエージェント開発支援ツール「API-Bridge for AI Agent」を提供しています。また、IBM Cloud上でwatsonx Orchestrateと連携し、AIエージェントの開発環境を約2時間で用意できる仕組みを構築しています(出典:IBM 事例紹介:MONO-X)。API-Bridge for AI Agentは、AIエージェントがIBM i のどこまでを見てよいかを絞り込むMCPサーバーです。AIに広い権限(*ALLOBJ)を与えずに、必要なデータや処理だけを渡せます。また「PVS One for AI Agent」を使えば、本番環境に影響を与えずに、クラウド上でAIエージェントの動きを試せます。
AIエージェントは、作りやすくなるほど数が増えます。部署ごとに似たエージェントが作られたり、誰が作ったか分からないエージェントが動き続けたりする問題が起こりやすくなります。基幹システムのデータを扱うなら、なおさら注意が必要です。
そのため、次の仕組みが欠かせません。
watsonx Orchestrateが「作る」だけでなく「管理する」機能を重視しているのは、このためです。
IBM i の開発・保守をAIで効率化したい場合は「IBM Bobとは?」も参考にしてください。
watsonx Orchestrateは、次の環境で利用できます。
料金プランは、次のとおりです(税別・月額)。
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プラン |
月額(税別) |
主な内容 |
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Trial |
無料(30日間) |
エージェントの構築、チャット画面、ツール・連携カタログ、評価機能などを試せる |
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Essentials |
84,500円 |
エージェント構築、ワークフローと文書処理、カスタムツール作成、セキュリティとアクセス制御など |
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Standard |
1,014,000円 |
Essentialsの全機能++利用上限の引き上げ(利用者数、文書量、メッセージ処理量など) |
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Premium |
個別見積もり |
Standardの全機能+データの分離、専用データ領域など |
※料金やキャンペーンは変更される場合があります。最新情報はIBM公式ページでご確認ください。(出典:watsonx Orchestrate 料金ページ(日本語))
費用は、どれだけの人がどれだけ使うかで決まります。まずは無料のTrialで、1つの業務を試してみるのが現実的です。
AIエージェントの導入でつまずく原因の多くは、技術ではなく「どの業務から始めるか」が決まっていないことです。導入前に、次の4点を整理しておきましょう。
どの業務から始めるか
いきなり全社に広げず、「まず1業務から」が鉄則です。件数が多く、手順がある程度決まっていて、効果を測りやすい業務が向いています。
既存システムとどうつなぐか
AIエージェントが参照・更新するデータが、どのシステムのどこにあるかを確認します。IBM i のデータを使う場合は、その連携方法も検討が必要です。
権限とデータの扱い
AIエージェントに、どこまでの操作を許すかを決めます。最初は「参照のみ」や「人の承認つき」から始めると安全です。
効果をどう測るか
処理時間、件数、ミスの数など、導入前の数字を測っておきます。比べる数字がないと、効果を説明できません。
最初の業務を選ぶには、次の3つの視点で現状を把握することが出発点になります。
「どの業務をAIエージェントに任せるか」は、現状が見えていないと決められません。IBM i 資産と業務を分析し、業務フローを起こして、AIで代替できる業務と改善ポイントを整理する必要があります。
watsonx Orchestrateとは何ですか?
AIエージェントを構築・管理するためのIBMのプラットフォームです。複数のエージェントやツールを1か所で動かし、統制できます。
watsonx Orchestrateで何ができますか?
代表的な機能は4つあります。AIエージェントの構築、既存のエージェントやツールとの連携、動作の評価、アクセスやポリシーの統制です。このほか、ワークフローや文書処理の自動化、APIやMCPサーバーを通じたシステム連携にも対応しています。
AIエージェントと生成AIは何が違いますか?
答えを返すのが生成AI、目的に向かって手順を実行するのがAIエージェントです。AIエージェントは、システムの操作や承認の回付まで行います。
watsonx Orchestrateの料金はいくらですか?
Essentialsが月額84,500円、Standardが月額1,014,000円です(税別)。30日間の無料Trialもあり、Premiumは個別見積もりです。最新情報はIBM公式ページでご確認ください。
IBM i のデータと連携できますか?
連携できます。連携できます。たとえば、MONO-Xの「API-Bridge」を使う方法があります。API-Bridgeでは、IBM i のデータや、既存のRPG・CLプログラムを、GUI操作でREST APIとして公開できます。公開したAPIをwatsonx Orchestrateにツールとして登録すれば、AIエージェントからIBM i を扱えます。実際にどこまで連携できるかは、システムの構成と要件によって変わります。
watsonx Orchestrateは、AIエージェントを作り、動かし、管理するためのIBMの基盤です。人事・調達・問い合わせ対応など、判断と入力を伴う業務の自動化に使われています。
IBM i を使う企業にとっては、長年蓄積してきた基幹データと業務ロジックが、AIエージェントの力を引き出す資産になります。ただし実際に進めるには、次の3つの壁を越える必要があります。
MONO-Xは、IBM i の資産と業務の分析から、API-BridgeやMCPサーバーによる連携、クラウド上の検証環境まで、この3つを一貫して支援しています。
どの業務からAIエージェントに任せるか、まずは現状の見える化から一緒に考えませんか。
※本記事は、弊社ブログや出典・参考記事の内容をもとに、編集部が作成しました。
「PVS One」では、IBM BobのライセンスをPVS Oneのサブスクリプションから消化・充当できるだけでなく、本記事のようなAIエージェントの検証を安全に行えるサンドボックス環境「PVS One for AIエージェント」や、「API-Bridge for AIエージェント」の無償利用特典をご用意しています。IBM iのAI活用や開発環境の効率化・検証環境についてご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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