AIコーディングツールは、どれが優れているかではなく、IBM i のソースコードを直接扱えるかどうかで選び方が変わります。
IBM Bobには、IBM i 向けの拡張機能「IBM Bob Premium Package for i」が提供されています。これを使うと、IBM i 上のソースコードを、PCにコピーせずに参照・編集・コンパイルできます。
この記事では、Claude Code・GitHub Copilotとの違いと、IBM i 環境での選び方を整理します。
※ IBM Bob Premium Package for i は、IBM Bobの有料プランに追加する有償の拡張機能です。
この記事で紹介するIBM i への接続機能は、この拡張機能のインストールが前提です(無料トライアルでは利用できません)。
IBM i の資産を扱うかどうかで、ツールを選ぶ観点は大きく変わります。
最大の判断軸は、「IBM i に直接つながり、IBM i 向けに作られた拡張機能があるか」です。
汎用のAIコーディングツールは、標準ではIBM i に直接アクセスする機能を持っていません。
IBM i のソースコードを扱うには、手元にコピーしてから読ませる運用が一般的です。
IBM Bobは、Premium Package for i を追加すると、IBM i 上のライブラリやIFSを作業場所にできます。
ソースコードの参照から編集、コンパイル、テストまでを、AIへの依頼で直接進められます。
Premium Package for i には、IBM i で長年使われてきた独自の言語やデータベース構造に合わせた仕組みが組み込まれています。
5つの観点で、確認できた公式情報をまとめました。
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観点 |
IBM Bob(+Premium Package for i) |
Claude Code |
GitHub Copilot |
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対応言語 |
Python・JavaScript・Java・COBOL・RPG など、新旧の幅広い言語に標準で対応。Premium Package for i では、IBM i 向けのモード・スキル・知識ベース(RAG)により、RPG・CL・DDS・SQL・COBOL などへの対応が強化される |
特定の言語に限定しない汎用ツール(対応言語の一覧は非公開) |
公開リポジトリにある幅広い言語(提案の品質は言語ごとの学習データ量による) |
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IBM i 環境への接続 |
Premium Package for i で、QSYS・IFSにネイティブ接続できる。ソースコードの読み書き、CL・SQLの実行、コンパイルも可能 |
標準の機能としてはない(MCPやJDBC・ODBCを使った外部ツールを利用するか、自社で作り込む必要がある) |
標準の機能としてはない(MCPやJDBC・ODBCを使った外部ツールを利用するか、自社で作り込む必要がある) |
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動作環境 |
VS Codeベースの専用IDE、ターミナルの「Bob Shell」 |
ターミナル、VS Code、JetBrains、デスクトップアプリ、Web |
VS Code、Visual Studio、JetBrains、Eclipse、Xcode、Vim/Neovim など |
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提供形態 |
SaaSのほか、Enterpriseプランでは Red Hat OpenShift 上で自社運用する構成(セルフホスト版)も選べる |
SaaS。Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundry 経由でも利用できる |
SaaS |
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料金体系 |
Pro 月$20から。Premium Package for i は月$40の追加 |
Pro 月$20から(無料プランは対象外) |
無料プランあり。Pro 月$10、Business 1席月$19など |
出典
IBM Bobのプランごとの料金は「IBM Bobの料金はいくら?プランと、IBM i で使うときの費用の考え方」で詳しく紹介しています。
3つのツールは、いずれも特定の言語に絞らない汎用のツールです。IBM Bobも、Python・JavaScript・Java・COBOLなど、新旧の幅広い言語に対応しています。
IBMは、モダナイズの対象として、Java・COBOL・PL/I・RPGといった既存の環境も挙げています。Java向けには、拡張パッケージ「Premium Package for Java Modernization」も用意されています。
違いが出るのは、IBM i の言語への対応です。Claude CodeやGitHub Copilotも、RPGのソースコードを渡せば、読んで説明することはできます。ただし、RPGやIBM i への対応を公式にうたっているわけではありません。
IBM Bobは、標準でもRPGやCOBOLのソースコードを読めます。
Premium Package for i を加えると、IBM i 向けのスキルと知識ベース(RAG)により、RPG・CL・DDS・COBOL などへの対応が強化されます。
固定形式のRPGをフリー形式に変換するスキルや、RPGⅢをILE RPGに変換するツールも用意されています。
ここが、現場の手間を最も左右する観点です。
汎用ツールでIBM i のソースコードを扱う場合、まずソースコードを手元にコピーする必要があります。修正した後は、IBM i に戻してコンパイルする作業も人が行います。
Premium Package for i を使うと、IBM i 上の場所そのものを作業場所(ワークスペース)にできます。新しいタスクを始めるときに「Library List」を選ぶと、QSYSのライブラリが作業場所になります。
「Home Directory」を選ぶと、IFSのホームディレクトリが作業場所になります。当社の検証では、次の流れをIBM Bobへの依頼だけで行えました。
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作業 |
当社の検証で確認したこと |
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参照 |
QSYSのソースメンバー一覧と処理概要を、5250画面を開かずに確認できた |
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編集(QSYS) |
ロジックの見直しを依頼したところ、修正案が提案され、承認するとメンバーに直接反映された。5250画面でも反映を確認できた |
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編集(IFS) |
IFS上のソースコードのデータ型の修正が、そのまま反映された |
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コンパイル |
Code for IBM i のアクション設定とライブラリリストを使って、QSYS・IFSどちらのソースコードもコンパイルできた |
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テスト |
RPGUnitによる単体テストの作成と実行まで、同じ流れで進められた |
実際の画面や詳しい手順は、当社ブログの導入ガイド「【第3部】Edit機能編」、「【第4部】Build編」、「【第5部】Test機能編」で紹介しています。
ソースコードをコピーして戻す手間がないため、調べてから直し、コンパイルするまでが1つの画面で完結します。
一方で、5250画面で同じメンバーを編集中だとエラーになるなど、運用上の注意点もあります。
修正やコンパイルを試すときの注意点は、後半の「AIをつなぐのは、検証用の環境から」で紹介します。
IBMは、IBM BobとPremium Package for i の特長として、次の点を挙げています。他のツールとの比較表は、公式には公開されていません。
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区分 |
公式に挙げられている特長 |
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IBM i の慣習の理解 |
RPGのコードベースへの最初の依頼から、特別な指示なしでIBM i の慣習に沿った結果になるとしている |
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IBM i に特化したスキル |
RPG・CL・DDS・COBOL for i・Db2 for i とSQL・IWS(Webサービス)・単体テストなどの分野で、60以上のスキルが用意されている。例:固定形式からフリー形式への変換、OPMからILEへの変換、DDSからDDLへの変換、RPGUnitによるテスト |
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ワークフロー |
RPGのモダナイズ(固定形式からフリー形式へ)など、複数の手順を1つのセッションで順に進めるワークフローがある |
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IBM i の知識ベース(RAG) |
IBM i のドキュメントを検索して回答に生かす。ILEプログラミング、Db2 for i のSQL、IFS・QSYS、セキュリティ、性能などが対象。OSのリリースごとの違いなど、バージョンを踏まえた情報をもとに回答するとしている |
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IBM i 専用のモード |
IBM i の開発向けの「IBM i Developer」と、Db2 for i 向けのデータベースモード「IBM i Database」がある。IBM i Database モードは、Db2 for i のSQLの生成・チューニング・レビュー、クエリ性能の分析、インデックスの検討、ER図の作成などを支援する |
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ガードレールと監査 |
変更を適用する前に人が承認する運用ができ、監査にも対応できるとしている |
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利用状況の管理 |
組織全体のAIの利用状況を把握する機能(Bobalytics)がある |
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導入形態 |
SaaSのほか、オンプレミスやエアギャップ環境にも導入できる |
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サポート |
Enterpriseプランでは、専任チームによる優先サポートを受けられる。デモやPoCは、IBMまたはビジネスパートナー経由で相談できる |
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オープンソースとの関係 |
Code for IBM i などのオープンソースのIBM i 拡張機能を土台にしている。当社の検証でも、既存のCode for IBM i の設定を引き継いで使えた |
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機能の拡張 |
Java・IBM i・IBM Z 向けの拡張パッケージがある。カスタムモードやMCPでも機能を広げられる。当社の検証中にも、IBM i 向けの機能追加(Web APIの管理スキルなど)があった |
出典
汎用ツールとの一番の違いは、IBM i の開発に合わせた機能が、最初から製品として用意されていることです。汎用ツールでも、ルールやMCPを自社で整えれば近いことはできますが、その準備と保守は自社で担うことになります。
所要時間の参考として、当社の検証値を紹介します。
2026年4月に、ある業務の一部にあたるRPGのソースコードを対象に、プログラム階層とCRUD(どのプログラムがどのテーブルを作成・参照・更新・削除するか)の一覧の作成を、IBM BobとClaudeに依頼しました。
その結果、IBM Bobは、Claudeの約3分の2の時間で処理を終えました。
※当社の検証での数値です(参考情報)。IBM Bobは当時のバージョンでの結果で、その後も機能の改善が続いています。
※分析対象のプログラムとテーブル定義をPCに保存し、両方のAIに同じものを読み込ませる方法で行いました(Premium Package for i の提供開始前)。
※所要時間は、対象のソースコードや調べ方、ツールに設定するルール(指示や作業手順の決まりごと)によって変わります。
すべての現場で Premium Package for i が必要なわけではありません。次のような場合は、IBM Bob本体や、ほかの汎用のAIコーディングツールで十分なこともあります。
汎用ツールでも、MCPやJDBC・ODBCを使った外部ツールを利用するか、自社で仕組みを作り込めば、IBM i とつなぐことはできます。
ただし、つなぐ機能だけでなく、IBM Bobで提供されているような「ガードレールと監査」(変更を適用する前の承認や、監査への対応など)への考慮も必要です。
そうした環境を用意できるなら、汎用ツールで運用する選択肢もあります。
次の5つの質問に答えると、自社に合うツールの方向が見えてきます。
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質問 |
「はい」の場合 |
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RPG・COBOL・CLの資産を日常的に扱いますか? |
IBM Bob+Premium Package for i が向いています |
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IBM i 上のソースコードを、コピーせずに直接参照・修正したいですか? |
IBM Bob+Premium Package for i が向いています |
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AIにコンパイルやSQLの実行まで任せたいですか? |
IBM Bob+Premium Package for i が向いています |
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ソースコードやAIを社外のクラウドに出せない要件がありますか? |
自社運用の構成を選べるかを各製品で確認します |
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開発の中心はIBM i の外側(Web・APIなど)ですか? |
汎用ツールでも十分な場合があります |
ただし、これらに正しく答えるには、自社の資産を把握していることが前提です。
「RPGとCOBOLがどれくらいあるのか」「どこに何があり、どうつながっているのか」が分からないと、判断できません。判断の出発点は、自社資産の現状を知ることです
IBM i のソースコード(SAVF)と、貴社ホームページの情報、ヒアリングの内容をお預かりします。当社のAI解析ツールで現行システムを解析し、分析結果と、課題・改善の提案までをお届けします。
ツールは1つに絞る必要はありません。改善したい内容によって、手段を使い分ける考え方が現実的です。
Premium Package for i を使うと、AIがIBM i 上のソースコードを直接書き換えたり、コンパイルやSQLを実行したりできます。便利な反面、操作する対象は本物のライブラリやデータです。
本番環境や、日々の開発業務で使っている開発環境に、AIを直接つなぐのは避けましょう。
まずは検証用の環境を別に用意し、AIの動きを確かめてから、業務への取り入れ方を決めるのが安全です。当社の検証でも、検証用の環境を使ったことで、AIの試行錯誤も含めて安心して試せました。
当社では、AIエージェントの検証を安全に行えるサンドボックス環境「PVS One for AIエージェント」を提供しています。
>>PVS Oneに関するお問い合わせはこちら
・IBMのBobとVS Codeの違いは何ですか?
VS Codeはソースコードを書くためのエディタで、IBM BobはIBMが提供するAIコーディングエージェントです。IBM BobはVS Codeをベースにした専用の開発画面を持ち、その中でAIに依頼します。
・IBM Bobは他のAIコーディングツールと何が違いますか?
IBM i やメインフレームの資産を扱うための、専用の拡張機能が提供されている点です。IBM i 向けの Premium Package for i(有償)を使うと、IBM i 上のソースコードを直接読み書きし、コンパイルまで行えます。
・IBM Bobにはどのモデルが使われていますか?
IBM Bobは、作業ごとに最適なモデルへ振り分ける「マルチモデル・オーケストレーション」を採用しています。
AnthropicのClaude、Mistralのオープンソース・モデル、IBM Graniteなどに加え、コード推論やセキュリティー向けに調整された専用モデルを組み合わせて使います。
単純な処理は軽量なモデルに、複雑な処理は高性能なモデルに割り当てることで、成果の向上とコスト削減を両立するとしています。
オンプレミス版では、Claude・Gemini・GPTなどのクラウドのモデルや、エアギャップ環境向けのモデルから1つを選んで設定します。
出典:
日本IBM「IBM、エンタープライズ向けAI開発パートナー『IBM Bob』を発表」(2026年4月30日)
(https://jp.newsroom.ibm.com/2026-04-30-introducing-ibm-bob-ai-development-partner-that-takes-enterprises-from-ai-assisted-coding-to-production-ready-software)
IBM Bob「サポートされているモデル」
(https://bob.ibm.com/ja/docs/ide/enterprise/on-premises/model-gateway/supported-models)
・汎用のAIツールでIBM i のRPGは扱えますか?
手元にソースコードを持ってくれば、読ませて説明させることはできます。ただし、IBM i 上の資産に直接アクセスする機能は、標準では持っていません。
・どちらを選べばよいですか?
扱う言語、IBM i への接続の要件、提供形態の3つで判断します。RPGなどの資産を直接扱いたいなら、IBM Bob+Premium Package for i が向いています。
IBM i の外側の開発が中心なら、汎用ツールでも十分です。
自社の環境ではどれが合うのかは、現状を見える化してから判断できます。
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※本記事は、弊社ブログや出典・参考記事の内容をもとに、編集部が作成しました。
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